父と母がほぼ同時期に退院すると決まった
去年のことです。
父と母がほぼ同じ時期に入院しました。
そして退院の日もほぼ同時に決まりました。
(え、二人いっぺんに帰ってくるの?)
それまで父と母は二人で自宅で暮らしていました。父のことは母がなんとなく見てくれていたんです。でもその母の体力もずいぶん落ちていました。
退院したばかりの母に父の世話までお願いするのは無理。
それはわたしにもすぐ分かりました。
とにかく母の介護の負担を減らさないといけない。
そのためのデイサービスでした。
実はあまり困らなかったんです
こう書くと「大変だったんですね」と言っていただけそうなのですが……正直に言うとわたしはあまり困りませんでした。
理由ははっきりしています。たまたま知っていただけなんです。
この4つが揃っていたので迷う時間がほとんどありませんでした。
(下の2つ——毎月いくらかかるのかという話は 介護保険のしくみと切り離せません。制度の説明の回でお伝えします。)
でもバタバタ動きながら ずっと頭の片隅で思っていたことがあります。
これ 何も知らない人がやろうとしたらかなり大変だろうな。
少なくともこの速さでは決められなかったと思います。どこに何を頼めばいいのかも どのデイサービスが親に合うのかも 調べようがないですもんね。
もうそろそろ うちの親も 介護が必要?と感じているあなたに
あのときわたしの頭の中にあった「物差し」を そのまま置いていきますね。
いつか必要になった日に 少しでもお役に立ちますように。
まず知ってほしい。デイサービスは「どこも同じ」ではない
デイサービスと聞いて どんな場所を思い浮かべますか。
わたしは働く前 なんとなくこう思っていました。
(お年寄りが集まって 体操して お風呂に入って お昼を食べて帰ってくるところ)
だいたい合っています。でも ぜんぜん足りませんでした。
働いてみて いちばん驚いたのはここです。
同じ「デイサービス」でも 1軒ずつ雰囲気がまるで違う。
どちらが良い 悪いではありません。合うか 合わないかだけなんです。
にぎやかな場所で元気が出る方もいれば 人が多いだけで疲れてしまう方もいます。同じ人でも その時の体調で変わります。
実はこれ 制度の上でも分かれています
雰囲気の違いって 感覚の話に聞こえますよね。でもちゃんと線が引かれているんです。
- 定員18人以下 … 「地域密着型通所介護」という小さめのデイサービス
- 定員19人以上 … ふつうの通所介護(大きめ)
ふわっとした好みの話ではなく 人数という形のある条件として考えることができます。
だからパンフレットの写真では選べない
建物がきれい。設備が新しい。写真の笑顔がすてき。
見比べて いいところを選ぼうと思いますよね。でも 通うのは自分ではなく親です。
デイサービスは「1つのサービス」ではなくて 1軒ずつ違うお店のようなもの。
まずはこれだけ持って帰ってください。ここが分かると 次の「どう選ぶか」がぐっとラクになります ☺️
父を思い浮かべながら見ていた、4つのものさし

デイサービスが1軒ずつ違うと分かると、次に出てくるのはこの質問だと思います。
(じゃあ うちの親にはどこが合うの?)
このときわたしが見ていたのは パンフレットではありませんでした。父の顔です。
紙に書き出したわけではありません。でも あとから振り返ると 頭の中にはちゃんと4つの物差しがありました。
1つずつ 父の場合をお話ししますね。
① 性格と、これまでの人づきあいの仕方
まず考えたのは 制度のことでも場所のことでもなく 父がどういう人かでした。
父は 気心の知れた人たちとは仲良く話をするのですが 変化の大きい新しい物事には慎重になるタイプです。知らない人たちの中で その場で説明されたルールをすぐに理解してゲームで競う——これは負担が大きすぎる 嫌になるだろうなと考えました。
ここが出発点です。
「楽しいプログラム」を探すのではなく 「父という人が過ごす場所」を探す。
同じ場所でも これが逆の性格の方なら 正解はまるっきり別になります。
② 人数と、その場の雰囲気
そこで まず人数は少なめにしぼりました。
にぎやかすぎない所。職員さんも利用者さんも おだやかでゆったりしている所。
ふわっとした「静かな所がいいんです」ではなく 「少人数の所を探しています」と伝えました。
③ のんびり過ごせるか
父は みんなで一斉に体を動かすのも 得意ではありませんでした。
音楽に合わせて手をたたいて 数を数えて 一緒に腕を上げる。楽しい方にはとても楽しい時間ですが 父にとってはそうではありませんでした。
だからわたしは 行事やレクリエーションがぎっしり詰まっている所ではなく お茶を飲んで のんびりしていても浮かない所を探しました。
ここも 良い悪いではありません。張り合いが出て元気になる方もたくさんいらっしゃいます。うちの父はそうではなかった というだけの話です。
④ 職員さんの顔ぶれが変わらないか
これは 働いていたからこそ見ていた所かもしれません。
大きなデイサービスは 職員さんの数が多くて 体制としてはとても手厚いです。人手があるのは間違いなく良いことです。
でも父にとっては 逆に落ち着かないと思いました。
行くたびに 前の人と違う。名前も顔も覚えきれない。それが毎回続くと 通う場所が「知らない人がいる所」のままになってしまいます。
反対に 顔ぶれが変わらない小さな所なら 「いつもの人がいる所」に変わっていきます。
手厚さ = 合う ではない。 ここは意外と見落としがちなところです。
4つを ひとことにすると
書き出してみると 結局わたしが見ていたのはこれだけでした。
父が そこに馴染めるか。居心地が悪くないか。
設備でも 評判でも 建物の新しさでもありませんでした。
そしてこの物差しは お父さんお母さんの顔を思い浮かべれば あなたにも作れます。 介護の知識はいりません。「うちの親はにぎやかな所が好きだったか」——それを知っているのは ご家族だけですから ☺️
働く側にいたわたしが 施設見学で見ていたこと
デイサービスで働いていたころ 見学に来られるご家族に 何組もお会いしました。
そして 見ておられる所が だいたい同じでした。
- 建物やお風呂がきれいか
- どんなサービスをしてもらえるか
- 何をして過ごすのか
みなさん とても真面目に見ておられました。悪いことでは まったくありません。大切な親御さんを預ける場所ですから 当然です。
でも 働く側にいたわたしが父のデイサービスを選ぶときに見ていたのは 少し違う所でした。
利用者さん全体の雰囲気
設備は 見ればわかります。でもその部屋にいる人たちの空気は パンフレットに載っていません。
みなさんがどんな表情でいるか。声の大きさ。笑い声の種類。父がその輪の中に座っている姿を想像できるかどうか。
ここが想像できない所は たぶん合いません。
職員さんの 動くスピードと 話すテンポ
これは 管理者さんだけを見ないでほしいという話でもあります。
見学のとき 案内してくださるのは たいてい管理者さんや相談員さんです。その方たちは 説明も丁寧で 感じの良い方がほとんどです。
でも 父が毎日そばで過ごすのは 現場の職員さんなんですよね。
だからわたしは 案内を聞きながら 後ろで働いている職員さんを見ていました。
- 歩くスピードが速すぎないか
- 話すテンポが 父の返事の速さと合うか
- 忙しそうに見えないか
てきぱきしていることは 本来とても良いことです。でも テンポが速い場所は 父にとっては急かされる場所になります。合う合わないは ここでも人それぞれです。
広すぎても 豪華すぎても
意外に思われるかもしれませんが 立派すぎる建物も 合わないことがあります。
広いホール。きれいなソファ。ホテルのような玄関。
気後れしない方には まったく問題ありません。でも父のように 新しいことに慎重なタイプだと 建物に入るところから緊張してしまいます。
「立派だから安心」ではなく 「うちの親が 気後れせずに座っていられるか」。見るのはそこでした。
父には ちょっと緩いくらいで ちょうどいい
父のデイサービス選定で わたしがいちばん強く考えたのは これです。
デイサービスは 特別なサービスを受けに行く場所というより 長い時間を過ごす場所。
だとしたら 大事なのは立派さではなくて 居心地が悪くないこと 気後れしないことです。
父には ちょっと緩いくらいで ちょうどいい。
きちんとしすぎている場所より そのくらいのほうが 父は肩の力を抜いていられる。わたしはそういう基準で選びました ☺️
合わない所を選ぶと、こうなる
ここまで「合うか 合わないか」と書いてきました。
では 合わなかったら どうなるのか。
おどかすつもりはないのですが ここを知らずに選ぶのがいちばんこわいので 正直に書きますね。
まず 送迎車に乗れません
デイサービスは 朝 送迎車がお迎えに来るところから始まります。
合わない所だと そもそもここで乗ってくれません。
玄関先で「行かない」。そのまま利用キャンセルです。職員さんも無理に乗せることはできません。

(せっかく手続きをして やっと決まった1日目が これで終わることもあります)
着いても 出入り口の前で座り込む
わたしが実際に見た場面です。
到着してすぐ 出入り口の前で座り込んで「帰りたい」とおっしゃる方がいました。
中には入っています。でも 一歩も進めない。そこにいるのがつらいということが 見ていて分かります。
いちばんこわいのは ここです
「デイサービスなんて どこにも二度と行かない!」
こうおっしゃって その後ほとんどのサービスを断ってしまわれた方がいました。
ここが本当にこわいところです。
合わなかったのは その1軒なのに 「デイサービス」というもの全部が 嫌なものとして残ってしまう。
次にどんなに合う所を見つけても もう扉が閉まっています。
家族が疲れます
ご本人は 拗ねていればいいんです。でも 家族は疲れます。
思い出してください。そもそも何のためにデイサービスを探し始めたのか。
わたしの場合は 母の介護の負担を減らすためでした。
なのに 合わない所を選んでしまうと 朝のやりとりが新しく増えるだけになります。負担は減るどころか 増えてしまうんですね。
見るのは 本人に合っているのか だけ
完璧に当てなければいけない という話ではありません。
ただ パンフレットのきれいさではなく 親の顔を思い浮かべて選ぶ。 それだけで 外れる確率はずいぶん下がります。
前の章までの物差しは そのためのものでした ☺️
最初に望むことは最小限にしよう
デイサービスが決まると 今度はこう思いたくなります。
(楽しく過ごしてくれたらいいな)
(お友だちができたらいいな)
自然な気持ちだと思います。でも わたしはここを できるだけ低くしておきました。
わたしが父に望んでいた合格ラインは これだけです。
低いでしょうか。でも わたしは本気でこれくらいに置いていました。
望みが高いと 責める相手が増えます
期待を高く持つと 思ったとおりにならなかったときに 気持ちの行き場がなくなります。
「せっかく行かせたのに 楽しくなさそう」
「あそこは失敗だったのかな」
「わたしの選び方が悪かったのかな」
そして その空気は ご本人にも伝わります。
でも 合格ラインが「嫌がらなければそれでいい」なら 帰ってきた父が何も話さなくても 今日も合格なんです。
低く置いておくと 続けられます。そして続けば そのうち慣れます。
ただ 1つだけ譲らなかったこと
望みは低くしましたが ここだけはと思っていたことがあります。
なるべく同じ所に たくさんの日数 行ってほしい。
あちこち変えないほうが 父は慣れます。それに 曜日が決まっていないと こちらの生活の予定が立ちません。
そして この「予定が立たない」が わたしにとっては切実な問題でした。
正直に言うと 父のためだけではありませんでした
きれいごとではない話をします。
わたしは 仕事を辞めたくありませんでした。
だから 平日に父と母が過ごせる形を どうしても作らないといけなかった。
デイサービスだけでなく ヘルパーさんの手配もして 平日の介護の体制を組みました。順番としては 「父に良いものを」よりも先に 「平日をどう回すか」があったんです。
こう書くと 冷たい娘に見えるでしょうか。
でもわたしは これでいいと思っています。
倒れるのは たいてい世話をする側です。 母の休める時間を作ること。わたしが仕事を続けられること。それは父のためでもあります。家族が続けられなくなったら 元も子もありませんから。
もしあなたが今 「親のためじゃなくて 自分が楽をしたいだけかもしれない」と後ろめたく思っているなら——
それでいいんですよ。 わたしもそうでした ☺️
きょう、やってほしいこと(1つだけ)
ここまで お付き合いいただきありがとうございました。
最後に お願いというか きょうやってほしいことを1つだけ書いて終わります。
申請でも 電話でも 見学でもありません。
これだけです。
紙に書かなくてもかまいません。スマホのメモでも 頭の中でも。5秒で決まると思います。
たったこれだけで 何が変わるのか
いざその日が来ると 気持ちも時間も余裕がありません。退院の日は突然決まりますし 制度の言葉は難しいし 決めることは山ほどあります。
そのときに 「うちの親は おだやかな所の人です」と最初から分かっていると
- パンフレットの写真に惑わされずにすむ
- 「少人数の所を探しています」と 人に伝えられる
- 見学に行っても 見る所が決まっている
迷う時間が いちばん減ります。
わたしが去年 二人分の退院をなんとか乗り切れたのも 才能でも根性でもなくて 父がどういう人か知っていたからでした。
そしてそれは 今のあなたも すでに知っていることなんです ☺️
覚えておいてほしい3つ
いつか必要になった日に この3つが あなたの肩の力を抜いてくれますように。
次回は 「デイサービス探しは 誰に頼めばいいのか」。ケアマネジャーさん(介護の計画を作ってくれる人)に どう伝えればいいのかの話です。
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