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親の介護は、ある日とつぜん始まります。転んで骨折した、物忘れが増えてきた、そんな小さな変化がきっかけになることも少なくありません。いざというときに頼りになるのが介護保険ですが、「どこに行けばいいのか」「何を持っていけばいいのか」が分からず、最初の一歩でつまずいてしまう方がとても多いのです。
この記事では、介護保険の申請の流れを7つのステップに分けて、順番どおりにたどれるようまとめました。必要な書類、認定調査で聞かれること、結果が出るまでの日数まで、はじめての方がつまずきやすい場所を先回りして解説します。読み終えるころには、明日どこへ行けばよいかがはっきりしているはずです。
介護保険の申請の流れ7ステップ

介護保険の申請は、相談から結果通知まで7つのステップで進みます。全体像を先に知っておくと、いま自分がどこにいるのかが分かり、余計な不安を抱えずにすみます。手続きの主役は市区町村です。申請する側があちこち走り回る必要はなく、必要な連絡は役所が主治医などに取ってくれます。まずは大きな地図を頭に入れましょう。
相談窓口の確認
最初にすることは、住んでいる市区町村の介護保険担当窓口か、地域包括支援センターへの相談です。いきなり申請書を書く必要はありません。「親の様子が心配で」と伝えるだけで、担当者が状況を聞き取り、申請が必要かどうかを一緒に考えてくれます。電話でも受け付けているので、まずは一本かけてみてください。
申請書の提出
要介護認定の申請書は窓口でもらえますし、多くの市区町村ではホームページからも印刷できます。書く内容は氏名や住所、被保険者番号、主治医の名前と病院名くらいで、難しい記入はありません。本人が窓口に行けない場合は、家族が代わりに提出できます。
認定調査と主治医意見書
申請を受け付けると、市区町村の調査員が自宅や入院先を訪ねて心身の状態を確認します。これが認定調査です。同時に、市区町村から主治医へ意見書の作成が依頼されます。この2つは役所が段取りしてくれるため、家族が病院に頼みに行く必要はありません。
審査判定と結果通知
調査結果と意見書をもとに、コンピュータによる一次判定が行われ、続いて専門家が集まる介護認定審査会で二次判定を出します。ここで決まるのが、非該当・要支援1と2・要介護1から5までの区分です。結果は郵送で届き、あわせて新しい介護保険被保険者証が送られてきます。
申請できる人の条件

介護保険は、年齢によって使える条件が変わります。ここを知らずに窓口へ行くと、「まだ対象外です」と言われて戸惑うことがあります。ポイントは65歳を境に扱いが大きく違うという点です。40代や50代の方でも使える道はありますが、条件が限られます。自分の家族がどちらに当てはまるか、先に確かめておきましょう。
65歳以上の場合
65歳以上の方は第1号被保険者と呼ばれ、原因を問わず介護が必要な状態であれば申請できます。病気やけがが理由でなくても、加齢によって身のまわりのことが難しくなってきた、という理由で構いません。65歳の誕生日が近づくと、市区町村から介護保険被保険者証が自動的に届きます。
40〜64歳の場合
40歳から64歳までの方は第2号被保険者にあたり、国が定めた16種類の特定疾病が原因である場合に限って申請できます。若年性認知症や末期がん、関節リウマチなどが含まれます。転倒による骨折など、特定疾病以外が原因のときは対象になりません。
家族や代理人による申請
本人が申請するのが原則ですが、実際には家族が代わりに手続きするケースがほとんどです。遠方に住んでいて手続きが難しいときは、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所が代行してくれます。成年後見人がついている場合は、後見人が申請します。
申請の窓口と持ち物

窓口に着いてから「書類が足りません」と言われるのは、時間も気力ももったいない話です。持ち物は多くありませんが、主治医の名前と病院名だけは必ずメモしていってください。ここが空欄だと手続きが先へ進みません。かかりつけ医がいない場合も、その旨を伝えれば相談に乗ってもらえます。
市区町村の介護保険課
申請書の正式な受付先は、住民票のある市区町村の介護保険担当課です。名称は「介護保険課」「高齢福祉課」など自治体によって異なります。平日の日中しか開いていないことが多いため、仕事を持つ方は事前に電話で受付時間を確かめておくと安心できます。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは、高齢者の暮らし全般を支える相談所で、中学校区にひとつ程度の割合で置かれています。申請の代行もしてくれますし、介護保険以外の使える制度も教えてくれます。何から相談すればよいか分からないときは、役所よりもこちらのほうが話しやすいでしょう。
必要書類のチェックリスト
認定調査で聞かれること

多くの家族が緊張するのが認定調査です。試験ではないので身構える必要はありませんが、ふだんの姿を正しく伝えられるかどうかで結果が変わります。高齢の方は他人の前で気を張り、いつもよりしっかり受け答えしてしまいがちです。その場に家族が立ち会う意味は、まさにここにあります。
調査の日程と場所
申請からおおむね1週間から2週間で、調査員から日程調整の連絡が入ります。場所は自宅が基本ですが、入院中や施設入所中であればその場所で行われます。家族が立ち会えるよう、都合のよい日を遠慮なく伝えてください。
基本調査74項目の中身
調査は全国共通の74項目で行われます。寝返りや歩行といった体の動き、食事や排せつの様子、物忘れや意思疎通の状態、薬の管理や金銭管理まで幅広く確認されます。所要時間は1時間ほどで、あわせて特記事項という自由記述欄に、数字では表せない事情が書き込まれます。
立ち会いのコツ
本人の前で困りごとを口にしにくいときは、あらかじめメモを用意して調査員に渡すとよいでしょう。「週に2回は夜中に起きて外へ出ようとする」のように、頻度と具体的な場面を書くと伝わります。できることではなく、できない日があることを伝えるのが大切です。
結果が出るまでの期間

結果が届くまでの期間は、介護保険法で原則30日以内と定められています。とはいえ現場では延びることも珍しくありません。その間まったくサービスを使えないかというと、そうではないのです。待っている時間を無駄にしない方法があるので、あわせて知っておきましょう。
原則30日という目安
申請書を提出した日から30日以内に結果を通知するのが決まりです。認定の効力は申請日にさかのぼるため、結果を待っている間に使ったサービスも、あとから介護保険の対象になります。この仕組みが、次に説明する暫定ケアプランを支えています。
遅れる主な理由
30日を超える場合は、市区町村から延期通知が届きます。よくある理由は、主治医意見書の作成に時間がかかっている、認定審査会の開催が混み合っている、本人の体調が不安定で調査日を動かした、といったものです。通知が来たら理由を電話で確認しておくと見通しが立ちます。
暫定ケアプランという方法
結果を待たずにサービスを使い始める方法が暫定ケアプランです。ケアマネジャーが想定される区分でプランを組み、その範囲でデイサービスなどを利用します。ただし想定より軽い区分が出ると、はみ出した分は全額自己負担になります。使う前に必ず担当者と相談してください。
認定結果に納得できないとき
「思ったより軽い区分だった」という声は少なくありません。そんなときに黙って受け入れる必要はなく、やり直しを求める手段が用意されています。ただし手段ごとに向き不向きがあり、選び方を間違えると時間ばかりかかってしまいます。それぞれの違いを押さえておきましょう。
区分変更申請
最も現実的なのが区分変更申請です。心身の状態が変わったことを理由に、あらためて認定をやり直してもらう手続きで、窓口は最初の申請と同じ市区町村になります。調査からやり直すため、結果はおおむね1か月ほどで出ます。
審査請求
認定そのものの取り消しを求めるのが審査請求で、提出先は都道府県に置かれた介護保険審査会です。結果を知った日の翌日から3か月以内という期限があります。判断が出るまで数か月かかることもあるため、急いでサービスを使いたい場合には向きません。
再申請のタイミング
認定には有効期間があり、原則12か月、更新後は最長で48か月です。期限が近づくと更新の案内が届きます。状態が明らかに変わったときは期間の途中でも区分変更を出せるので、次の更新まで待つ必要はありません。
よくある質問
ここからは、窓口や相談の場でよく出る質問をまとめます。細かい運用は自治体ごとに違う部分があるため、最終的にはお住まいの市区町村で確認してください。それでも、あらかじめ答えを知っておけば、相談の時間をもっと有効に使えます。気になる項目から読んでいただいて構いません。
申請にかかる費用
要介護認定の申請そのものは無料です。認定調査の費用も、主治医意見書の作成料も市区町村が負担します。家族が支払うお金はありません。費用が発生するのは、認定が出て実際にサービスを使い始めてからです。
入院中の申請
入院中でも申請できます。退院後の生活にサービスが必要になりそうなら、むしろ入院中に動き出したほうが切れ目なくつながります。ただし手術直後などで状態が大きく変わる時期は、少し落ち着いてからのほうが実態に合った結果になります。病院の相談室に声をかけてみてください。
利用開始までの期間
申請から結果通知まで約1か月、その後ケアプランを作ってサービス開始まで1週間から2週間が目安です。合計で1か月半ほどを見ておくと落ち着いて動けます。急ぐ事情があるときは、暫定ケアプランで申請直後から利用を始める道もあります。
要支援と要介護の違い
要支援は介護予防を目的とした区分で、ケアプランは地域包括支援センターが作ります。要介護は日常的な介護が必要な区分にあたり、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当します。使えるサービスの種類と月々の上限額も変わってきます。
引っ越したときの手続き
市区町村をまたいで引っ越す場合は、転出時に受給資格証明書を受け取ります。それを持って転入先の窓口へ14日以内に届け出れば、いまの要介護度をそのまま引き継げます。この手続きを忘れると認定を取り直すことになるので注意しましょう。
申請の取り下げ
申請後に本人が強く拒んだ場合などは、取り下げの届出をすれば手続きを止められます。ペナルティはなく、あらためて申請し直すこともできます。まずは窓口に事情を伝えて相談してみてください。
まとめ
介護保険の申請の流れは、相談から始まって結果通知まで7つのステップで進みます。難しく見える手続きも、順番どおりにたどれば一つひとつは短い作業です。迷ったときの入り口は、いつでも地域包括支援センターだと覚えておいてください。
いちばん多い失敗は、様子を見ているうちに時間だけが過ぎてしまうことです。申請しても必ず認定されるとは限りませんし、認定されたからといって使わなければならないわけでもありません。まずは今日、お住まいの地域包括支援センターに電話を一本かけるところから始めてみませんか。その一本が、ご家族の暮らしを守る最初の一歩になります。
後回しになりがちな自分の体
親のことを調べていると、気づけば夜中になっています。そのあいだ、自分の体のことはいつも後回しです。健康診断の封筒を開けないまま引き出しに入れている、印がついていた項目を見なかったことにしている。そんな方は、けっして少なくありません。
でも、支える側が倒れてしまうと、いちばん困るのは親のほうです。とはいえ、いまの生活に「病院へ行く半日」をねじ込むのは、正直むずかしいと思います。だから最初の一歩は、家にいたままできることでいい。それだけでも、後回しにしていた気持ちが少し軽くなります。
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